多くの会社で使われている営業指標として、顧客ごとの年間売上高(受注額)でランク付けする「ABC分析」がある。
どんなビジネスでよいのだが、例えばA印刷の営業・田中さんは顧客を20社担当し、そのうち一番は年間300万円の売上の予備校・小宮ゼミと、同じく年間300万円の売上の薬局・土井ドラッグの2社で、ABC分析では、2社ともAランク客だ。
しかし受注額からではなく顧客の発注額からみると、小宮ゼミは年間3000万円の発注額があり、A印刷の受注額は300万円なので、残りの印刷需要は2700万円もあり、他社に発注されている。また土井ドラッグは年間発注額が350万円で、同じく300万円なので、残りの印刷需要はわずか50万円で深耕余地がないことがわかる。
これがABC分析の落とし穴である。
「自社の受注額」からは小宮ゼミも土井ドラッグもAランクの重要顧客だが、「顧客の総発注額」からは、顧客から見たA印刷の重要度が見える。つまり小宮ゼミから見たA印刷は重要度の低い業者にすぎず、土井ドラッグから見たA印刷は頼りがいのあるパートナーなのだ。
こうなると営業のやり方(戦略、方針)も自ずと変わるはずだ。
例えば、深耕余地の大きい小宮ゼミは、“できる”営業が担当し、訪問回数を増やし、人間関係を高め、引き合いを増やし、少しずつ受注を重ね存在感を高めていく。また土井ドラッグは、深耕余地はほぼないものの現在の受注額は大きいので気の利いた対応を心がけ、他社の参入を許さないようにするとか、対応が異なる。
多くのビジネスも同じだ。特に重要な顧客(Aランク客)は、年間の発注額はいくらで、どんな製品(サービス)を、どの会社(ライバル)に発注しているのかなど、ある程度情報を集めなければ、何の手も打てないはずで、結果ただ頑張るしかなくなる。
自社から顧客を視るだけでなく、顧客から視た自社はどんな位置づけなのか…を視る目を持つことが大切だ。
昔も今も、需要はお客様のところにしかない。